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手根管症候群

症状

手根管症候群では、親指から薬指の親指側の指尖部にしびれや痛みが出ます。特に夜中の2−3時や明け方に症状が強く、痛みで目を覚ます方もいらっしゃいます。朝起きたときには手がこわばっていることも多く、手を振ると楽になります。症状が進むと感覚が低下し、熱いものを触っても熱いとわからなくなってしまいます。さらに放置すると、親指の付け根の筋肉(母指球筋)がやせ、お箸使い、書字、ボタンかけなどが困難となり日常生活に大きな障害が出ます。また、手首のところで神経が圧迫されることが原因であるにもかかわらず、肘や肩の痛みやだるさを訴える方もおられます。

初診時の診察で手根管症候群の診断は大方つきますが、より正確な診断のためにレントゲン撮影やCT撮影、神経伝導検査を行う場合があります。

病態

手掌の付け根に、手首の骨(手根骨)と靭帯(横手根靭帯)に囲まれた手根管というトンネルがあります。このトンネルを9本の腱と1本の神経(正中神経)が走っています。更年期などでホルモンバランスの異常が起きると、腱周囲の滑膜が腫れます。初期では横手根靭帯のしなやかさが保たれており、横手根靭帯が伸びることで内部の圧を逃がすことができますが、滑膜の腫れが強くなると圧を逃がしきれず、正中神経を圧迫し、発症します。このパターンは更年期の女性に多くみられ、ホルモンバランスの異常が関連しているため、エクオール製剤の内服などが有効です(詳細は女性ホルモンと手疾患参照)

一方、横手根靱帯が肥厚して硬くなってしまっている場合は、内部の圧を逃がすことができず、すぐに正中神経を圧迫し、発症します。このパターンでは、保存的治療があまり効かないことが多く、手術治療の対象となります。

初期では感覚神経だけが障害されることが多いですが、母指球筋を支配する運動神経も障害されることがあります。この場合も保存的治療では改善が見込めないため、手術療法の対象となります。

治療

初期の手根管症候群に関しては、エクオール含有食品(サプリメント)の摂取やステロイドの手根管内注射が効果的です。しかし、これらの治療を行なっても改善がみられない場合や、治療に反応してもすぐに症状が再燃してしまう場合、母指球筋の萎縮が進行してきた場合などは、手術療法の対象となります。

手術療法では、横手根靱帯を切開し、正中神経の圧迫を取り除きます。当院では手の平に2cm程度の切開を置き、この手術を行なっています。5mm程度の創部から内視鏡を使って行なう施設もある中、わざわざ2cmの創部を作って手術をしているのにはいくつか理由があります。横手根靭帯をただ切離しただけでは、この切断端が正中神経へ癒着することがあり、後に症状の再発が起こることがあります。当院では癒着を起こしやすい親指側の切断端を2mm切除し、再発予防としています。また母指球筋へ行く運動神経を確実に温存し、特殊な筋肉(破格筋)やガングリオンを切除するなど、より確実な手術を行なうには、直視下に手術することが重要です。これ以外の部分については関節鏡を用いて神経を開放していますので、以前のような前腕までの長い皮切を置く必要はなくなりました。しかし広範囲に滑膜が腫脹している場合など、直視下に手術すべき場所が広い場合には、皮切をさらに拡大する必要があります。
また、周囲からの圧迫により、神経自体が硬くくびれたようになっている場合などは、神経を十分に剥離してきます(神経剥離術)。これにより、よりすみやかで確実な神経回復を期待できます。

母指球筋が萎縮した症例では、母指球筋へ向かう細い神経もしっかり剥離する必要があります。萎縮してから長期間経っていなければ、母指球筋の回復も期待できます。
時間のかかる治療ですので、すぐに親指を動かせるようになりたいという場合には、腱移行術を同時に行なうことも可能です。

手術の詳細は、以下をご確認ください。

手根管症候群術前
手根管症候群術前

​術前

手根管症候群術後
手根管症候群術後

​術後

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