肘部管症候群
症状
はじめは小指と薬指の小指側にしびれが出現し、肘の内側を軽く叩くだけでしびれが指先に向かって走るようになります。麻痺が進行すると親指と人差し指の間の水かきが凹み、指間部の筋肉がやせて手の甲が筋張ってきます。また、小指と薬指が曲げにくくなったり、第1・第2関節が曲がった形で伸展する「かぎ爪変形」を起こしたり、指の間でものを挟むなどの細かい動きがしにくくなります(巧緻運動障害)。
骨間筋の萎縮
骨間筋の萎縮と
小指のかぎ爪状変形
病態
尺骨神経は肘の内側の肘部管というところを通って薬指、小指まで伸びています。この肘部管周囲で尺骨神経が骨の変形やガングリオンなどにより圧迫されたり、肘の曲げ伸ばしによって伸展されたりすることにより発症します。幼少時の肘周囲の骨折や、生まれつきにより、肘の外反変形があると発症しやすいと言われています。尺骨神経は薬指の小指側半分と小指、小指球の感覚を支配しているため、障害されるとそのあたりにしびれが出ます。症状が進行すると、尺骨神経が支配している薬指・小指の深指屈筋腱や母指球以外の手内筋が麻痺するため、筋肉のバランスが崩れ、かぎ爪変形を起こしたり、手が使いにくくなったりします。
治療
血管拡張薬やビタミンB12などの薬物投与による保存的治療で改善しない場合は手術療法の適応となります。当院では肘の内側に4-6cmの皮切を置き、肘部管を開放し、尺骨神経全体を十分に剥離して、肘の内側の骨(内側上顆)に引っかからないように前方に移動させる方法を行なっています。この際に、神経が元の位置に戻らないように、神経のあった場所は縫合閉鎖してきます。術中に肘の屈曲伸展運動を行い、神経が引っかからずに移動するようになったことを確認しますが、この際に内側上顆の突出により神経の移動が妨げられる場合は、骨切除を行います。また、神経が圧迫により硬く変性している場合は神経の外膜をほぐす処置を行うことで神経のすみやかな回復を期待します。神経の回復には6−12ヵ月かけて徐々に神経が回復してきます。